おもちゃのビーズ、ガラスやあめ玉の透明感など、チープなものが輝く色と事象。
子供部屋のカーテンの揺れる布に包まれている世界の安心感や、心地のよいひとり
ぼっちの特別な空間。それらに憧れた幼い頃の私の小さな感動と憧憬を、大人にな
った今でも大切にしたい。また、幼い頃に特別だったものへいつまでも一途でいる
私たちは、ある種の愚かさや醜さを合わせ持っていると考える。私の絵の中の黒い
部分は、そういった怖さや儚さを映しているのだと思う。高価な宝石よりも、プラ
スチックや鍍金の安価なきらめきや、少女のころに見た世界のひろがりが、本物の
宝物でありますように。誰かの心の中に眠る、あこがれの箱を紐解くような感覚や
質感を表現していきたい。
北上ちひろ